歯周病は、軽度の歯肉炎から始まり、中度・重度の歯周炎へと進行していきます。ただし、必ずしも誰もが重度の歯周炎まで進行するとは限らないのです。若い時から歯肉炎を発症しているのに悪化しない人もいれば、緩やかに歯周炎に進行する人や急激に骨吸収まで進行する人もいます。
細菌学的な研究から、このような違いは感染している細菌の種類によって生まれると考えられています。口の中に存在する数100種類の細菌の中でも、歯周病に関係する細菌は10種類程度。これらの細菌の組み合わせによって、人それぞれの歯周病の状態が異なるのです。
基本的に歯周病は、「グラム陰性菌」と「嫌気性菌」の2つのタイプの細菌への感染で起こります。その中には、グラム陰性菌の一種「スピロヘータ」のように、口腔内の常在菌にも関わらず歯周ポケットに多く検出される細菌も見られます。
「グラム陰性菌」は細胞壁の成分に毒素作用があることから、それが歯ぐきの粘膜の炎症を引き起こす原因になるのです。また、増殖に酸素を必要としない「嫌気性菌」は、酸素にさらされると死滅してしまう「偏性嫌気性」と、酸素がある中でも生存が可能な「通性嫌気性」の2種類に分けられます。
歯周病菌の中でも、重度の症状に影響を与える「レッドコンプレックス」と呼ばれる3大歯周病菌「P.g.菌」「T.d.菌」「T.f.菌」は、歯周病を発症している人のほぼ7割が感染しているといわれています。また、割合的には非常に少ない「A.a.菌」は、30歳以下の若年者が発病する侵襲性の歯周病に多く見られます。
このように最近の研究では、感染している歯周病菌の種類によって、歯周病の症状や程度の違うことが明らかになってきています。どんな細菌がどんな症状に関係しているのか、ここでは代表的な6つの歯周病菌についての特徴を紹介します。
歯周病の患部以外からは検出されにくいことから、歯周の炎症などの歯周病の症状に大きく関わっていると考えられています。強い吸着力で歯肉組織にくっついて歯周組織を破壊や、正常な免疫活動を乱すほか、細菌の内毒素が歯槽骨の吸収を引き起こします。
歯周組織に定着するタンパクを持つ、歯肉縁下プラークに多く見られる細菌です。タンパク分解酵素によって歯周組織を破壊するほか、免疫を抑えることで治癒を妨げると考えられています。治療後にT.d.菌の割合が高い場合は、再発の恐れがあるため注意が必要です。
通常の歯周病の治療ではなかなか治らない、難治性歯周病の指標にされる細菌です。歯周組織の破壊が強い部分や、深部での活動性の高い病巣で多く見られ、T.f.菌が存在する場所では必ずP.g.菌とT.d.菌が検出されるといわれています。
若年性の歯周炎に多く見られ、白血球の働きを低下させるほか、内毒素やその他の毒素により歯周組織や身体の免疫反応に必要な細胞を壊します。歯肉組織の中にまで侵入して急速に症状を悪化させる「侵襲性歯周炎」に関係しているといわれる、難治性の高い恐ろしい細菌です。
一般的に誰の口の中にも存在する細菌ですが、口腔を不潔にするだけで、増加して歯周病を引き起こします。ホルモンやつわりなどの影響により口内の衛生状態が悪くなりがちな妊娠期や、ホルモンバランスの変化しやすい思春期に多く見られます。
ヒトの口腔内に常在する細菌で、プラーク形成の中心菌と考えられています。他の菌とともに「バイオフィルム」と呼ばれる“ヌメリ”を形成して、歯の表面に付着するのです。足の臭いや銀杏の異臭の元にもなっている「酪酸」を発生することから、口臭の原因にもなります。
母子感染が多い虫歯菌に対して、歯周病菌はキスなどの家族間のスキンシップや、食器を介した感染が考えられています。とはいえ、パートナーと接触をしないというわけにはいきませんよね。そこで重要となるのが日頃からの歯磨きや、定期的な歯科検診です。
口の中に歯周病菌が存在するとしても、必ず発病するとは限りません。歯周病には、歯垢や歯石、ドライマウスなどの口内環境や、ストレス・疲労・喫煙などの生活環境などの2次的な要因が関係することから、生活習慣の改善や歯磨きを徹底化することにより、歯周病菌の感染から身を守ることができるのです。
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